プロ野球独立リーグ堺シュライクス公式球団サイト│みんなでつくろう堺市民球団

Reportレポート

【第3回バトスタデー】笑いあり、ポロリありのイベント当日に密着。

随分と日も長くなり、夏の匂いがし始めてきたある日の黄昏時。

壁の向こうからは夫婦らしき二人のやりとりが聞こえる。仕事から帰ってきた旦那と、それを迎え入れる奥さんの声だ。

「ただいま」

「おかえりなさい」

男は帰ってくるなり鞄を床に放り投げた。冷たく乱暴な音から、男の亭主関白さがにじみ出ている。そして、間髪入れずに低い声で言い放つ。

「おい、いつものやつ出せよ」

「もうやめて、お願いだから」

求める旦那。嫌がる奥さん。

いいから出せって言ってんだろうがよ!!

「大きな声出さないでよ!わかったわよ…」

旦那の迫力に根負けしたのか、従う奥さん。

じっと息を殺し、聞き耳を立てる。聞いている場合じゃないのはわかっている。ただ、今はまだ暴力なのか性欲なのか判断できない。前者だったらすぐにでも止めに入るが、後者だったらこのまま聞き耳を立て続けるつもりだ。いずれにせよ、もうしばらく様子を見る必要がある。どうか後者であってくれ。

−−スパーンッ…!

僕の願いは叶わなかった。壁の向こうから乾いた音が鳴り響く。これは事案だ。奥さんの悶える声も聞こえる。すぐにでも止めに入らねば…!

正義感に駆られて動き出そうとした矢先に、妙なやり取りが聞こえた。

「おい、今の誰だ?」

「お、小笠原…?」

「正解ッ!」

様子がおかしい。なんだこの状況は。

僕の動揺をよそに、夫婦のやりとりはヒートアップしていく。

「次行くぞ次ィ…当てろよ当てろよ?」

「スパーンッ!」

「はうぅぅ…!バレンティン?

「正解ッ!」

冒頭からなにを読まされてるんだ、と思われた方へ。不快な思いをさせてしまっていたらごめんなさい。

実はこれ、「MZ-1グランプリ」にエントリーした芸人によるコントの一幕です。

隣の部屋で収録している時に、声だけ聞いて変な妄想をしてしまったので勝手にここで共有させていただきます。

ということで今回は、2021年8月8日に行われたバトスタデーについての記事です!

バトスタデーの裏で行われた賞レース「MZ-1グランプリ」とは?

まずはじめに、「MZ-1グランプリとはなんぞや?」という方に向けて説明させていただきます。「バトスタデーやります!」「それに向けてお笑いの賞レース開催します!」「なんで!?」ってなると思うので。

MZ-1グランプリとは、「第3回バトスタデー」の開催に向けて開かれた賞レースです。エントリーした芸人さんには野球ネタで勝負してもらい、優勝者にはバトスタデー当日の始球式や、漫画「バトルスタディーズ」への出演権、さらには賞金10万円などの特典が用意されました。

当初は「10組くらい集まれば万々歳」くらいに思っていたのが、紹介やSNSを経由してエントリーが増え、計23組の芸人さんが集まりました。参加してくれた芸人の皆様、本当にありがとうございます。2651票の一般投票と審査員4名の投票によって、優勝は「こゝろ」さん(ワタナベエンターテインメント所属)に決定致しました。

二人とも大阪出身で、荒木さんは堺が地元。これは凱旋ライブになるしおめでたい!と思っていたのだが、当日は体調不良のためやむなく欠席に。バトスタデー出演は叶いませんでしたが、特典である「バトルスタディーズ出演権」は獲得しているので、そのうち本誌に登場予定です。お楽しみに!改めてこゝろのお二人、MZ-1グランプリ優勝おめでとうございます!

(左から)荒木誠也、山出谷怜門

と、まぁこんな感じでMZ-1グランプリという賞レースが密かに行われていました。「賞レースが突然すぎてわけがわからない」と感じた方も多いはず。

なので今度は「なぜ賞レースを開催したのか?」について簡単に説明します。

我々のような歴史の浅い独立リーグの球団が知名度を上げる方法は2つ。NPBに選手を排出するか、他のことで話題を集めるか。前者は選手依存なのでお待ちいただくとして、球団としては後者に注力し、積極的に挑戦を続けていかなければなりません。竹原ピストルさんも唄っていました。「必要なのは走り続けることじゃない、走り始め続けることだ」って。オールドル〜キ〜!

NPB、ましてや他の独立リーグの球団とは違うことをやっていこう。そういった思いから、堺シュライクスは球団設立初年度から挑戦を続けてきました。そのひとつが、野球漫画「バトルスタディーズ」とのコラボであり、毎年8月にはコラボイベント「バトスタデー」が開催されてきました。今年も皆様のご支援のおかげで3度目の開催が決まりました。

さて、バトスタデーには毎年コラボテーマなるものがあります。第1回ではDL学園のユニフォーム。第2回ではアートイベント。そして第3回のテーマが「お笑い」です。昨年のアートもそうでしたが、今年の「お笑い」でより一層(良い意味で)わけのわからないイベントになってきた感があります。

↓今回のバトスタデーについて詳しく知りたい方はこちら↓

要約すると、「独立リーグの選手とお笑い芸人って共通点めっちゃあるやん!ほな、みんなでがんばっていきましょか〜!」という流れです。

さて、今回のテーマ「野球×お笑い」についての説明もあらかた済んだところで、本題であるバトスタデー当日の様子を振り返っていきましょう。

今年のユニフォームは「バトスタオールスターズ」

2021年8月8日。くら寿司スタジアム堺の球場周りには、キッチンカーや射的などの屋台が並び、夏祭りのような雰囲気が漂っていた。

「本当に、開催できてよかった…」

球団代表の畑くんが胸をなでおろすのも無理はない。皆様ご存知の通り、現在コロナ禍の真っ只中。イベント直前の8月2日には、もはや何度目かもわからない緊急事態宣言が発令されたため、今回のバトスタデーは開催自体が危ぶまれていました。しかし、徹底した感染対策、酒類提供なし、観客数50%の1000人以下などの条件下なら、とのことで開催することができたのです。

球場の入り口には赤いのぼりが一際目立つブースが設置されていました。大阪の老舗スポーツ店であり、堺シュライクスのオフィシャルトップパートナーのSPOTAKAさんです。SPOTAKAさんには、今回のイベント用に特別なユニフォームを製作してもらいました。それがこちら!

左が2021年モデル、右が2019年モデル

一見するとどちらも同じDL学園のユニフォームですが、よく見てください。色や質感も見ただけで違うし、胸元や袖の文字は刺繍となっております。

「DL学園」のモデルとして「PL学園」があるように、バトルスタディーズには、それぞれ実在する野球強豪校がモデルとなって登場しています。今回のバトスタデーでは、その作中に登場するライバル校のユニフォームを忠実に再現しました。

右上から時計回りで、横羽間→横浜(神奈川)、兵安→龍谷大平安(京都)、快苑→桐蔭(大阪)、花忠社→履正社(大阪)、DL→PL(大阪)

堺シュライクスのオーナー松本は、甲子園が大好き。コロナ禍になるまでは、春夏連続8年連続という観戦記録を残していました。どこの強豪校だよ。そんなオーナーだからこそ、細部には徹底的にこだわっています。

ユニフォームの色や素材はもちろん、襟の形はそれぞれ違うものに。こだわっていますね〜。極めつけは刺繍。ユニフォームを作る際の会議では、SPOTAKA大川さんから「刺繍はできますけど…高いっすよ?」と釘を刺されていたが、そんなことはお構いなし。「どうせならこだわりましょう」と二つ返事で刺繍をやる方向に話が進みました。後日届いた請求書を見て「さすがにやりすぎた。作った分だけ赤字になる」と少し青ざめていたのはここだけの話。

そんな高校野球ファンにはたまらないこだわりのユニフォーム。全くの野球素人ながら実際に着てみたのですが、着心地が抜群に良い。刺繍の手触りも新鮮。なんだか着ただけで気分がアガる。これは作った分だけ赤字になるわなぁ。

代打、トクサンTVに代わりまして、草野球

ユニフォームを作ってくれたSPOTAKAさんの呼びかけによって、11時からは草野球が行われた。ベンチには出場者の奥さんや子供の姿があって、冗談を交えながらも真剣に野球を楽しむ方々。なんだか見ているだけで楽しい気分にさせてもらいました。大人になっても青春は終わらないね!

この草野球の時間、本来の予定では、野球YouTubeチャンネルのトクサンTVの方々が所属するチーム「天晴」が来る予定でした。

トクサンTVとは?

野球少年からNPB選手まで幅広い層に支持を受けているYouTubeチャンネル。その登録者数は64万人を超え(2021年9月現在)、日本イチの野球YouTubeチャンネルと呼ばれている。

ちなみに堺シュライクスの登録者数は600人いかないくらいなので、100倍以上の差がありますね。素でエグいッ!そんな草野球チーム天晴ですが、どうやら大事な試合の日程と被ってしまったそうで今回は来れず。

そのかわり、7月14日の練習にトクサン、ライパチさん、守備猿ジュンさんが遊びに来てくれて夢のコラボが実現。その様子をシュライクスの100倍以上の登録者数を誇るトクサンTVで放送してくれました。動画内では、藤江コーチVSトクサン・ライパチさんの一打席対決が行われているので、まだの方は是非ご覧ください。トクサンTVのみなさま、本当にありがとうございます!

セイウンスカイ

草野球が終わり、選手たちの練習が始まった。この日の気温は35℃の猛暑日で、空には入道雲、グラウンドには蜃気楼が見え、わかりやすいほどの夏が広がっていた。この暑さにやられていたのが、高卒ルーキーの藤田青空。「息ができない」と苦しそうに練習している。

青森からやって来た彼にとって大阪の夏は、(大げさじゃなく)地獄のような暑さに感じるだろう。僕も青森出身だからすごくわかる。クソ暑い。異常だよこの暑さ。あと大阪って心なしかセミもうるさくない?これは関係ないか。

とにかく、北国の人は暑さに弱い。逆に言えば、青森人は寒さに強い。あれは高校生のころ、修学旅行で大阪に行ったときだ。11月で15℃という気温のなか、僕らは平然と半袖シャツで道頓堀付近を歩いていた。今思えば、あれは若さだったのかなあ…と入道雲を見上げながら思いにふけっていた。

休憩のため選手たちがロッカールームへ戻ったので、ついて行ってみることに。ここは普段見れない選手たちの素が見える場所だ。黙々と試合に向けて準備をする選手もいれば、仲間と冗談を言いながら笑いあう選手もいて、同じ空間だけどそれぞれの時間を過ごしている。

ロッカールームでひときわ仲良く見えたのが、投手陣の村上海斗(26)と吉村樹(19)。吉村が生意気な事を言うと、村上がそれにツッコみを入れる。なんだか少し歳の離れた兄弟のようだ。髪型も似てるし。

兄弟といえば僕にも3つ上の兄がいるのだけれど、ある時を境に仲が悪くなった。小学6年生くらいの時に兄弟でウイイレをやっていたときだ。

僕が連続で勝っていたせいか、明らかに兄の機嫌が悪くなっていた。「兄の威厳を守るためにも少しだけ手を抜いてやるか…」とわざと負けたのだけど、それがよくなかった。兄は勝った途端にブチ切れて、そのまま部屋を飛び出していった。

他にもある。二人でドラえもんを見ていたときだ。いつも泣いてばかりいるのび太くんに対して、兄は「腹立づわぁ、男らしぐね」とイライラしていた。ドラえもんを見ているだけなのに空気は悪くなり、今度は僕がたまらず部屋を飛び出した。こうしたすれ違いが続いて、お互い思春期に入ったこともあり、次第に話す機会が少なくなっていった。

何の話をしたかったのか。そうそう、仲良しこよしになる必要はないけど、空気の良さは大事で、チームの雰囲気が良いとそれにつられて良いプレーが生まれてチャンスが訪れるよねっていう話でした。

浪速の虎、中村拓

村上と吉村。それを囲んで和気あいあいとしている輪ができていた。その輪の外から牙をむく男が。

「おまえら見とけよ、おれの球」

そう言い放つのは、同じ投手陣の中村拓(23)だ。今季加入した中村とはあまり話せていないが、鋭い目つきに金髪で、首にはネックレス。なるほど、これは絶対元ヤンだ。下手したら元じゃなくて現役かもしれない。


恐い人は苦手だが、人を見た目で判断するのは良くない。人を見た目で判断するのは良くないことを、僕は藤江コーチから学んだ。恐る恐る中村に話を聞いてみると、面白い話が聞けた。

 

大阪出身の中村は、野球をやるために青森の大学へ行った。ただ、尖りすぎた性格がチームに合わなかったのか、1年生の時に退部し、そのまま大学を中退。大阪に戻った彼が選んだのは鳶職の道だった。

それから4年間、真面目に鳶職の仕事を続けてきた中村だったが、野球への気持ちがふつふつと再燃し、仕事を辞めて堺シュライクスへの入団を決めた。4年間のブランクはあるものの、彼には鳶職で培った身体能力と、持ち前の気持ちの強さがある。それを見て藤江コーチは「上で勝負したいなら真っ直ぐ(ストレート)だけ投げろ」と指示を出した。

その指示を忠実に守り直球勝負に徹している中村は、8月8日時点で17イニング無失点、許したヒットは5本という成績を残している。

secret base 〜キッチンカーがくれたもの〜

イイ話も聞けたところで時計を見ると、すっかり昼を過ぎている。小腹が空いてきた。くら寿司スタジアム堺は、設備も整っていて綺麗で新しく、それはもう完璧と言っていい球場なのだけど、唯一の欠点はコンビニまで歩いて10分ほどかかってしまうことだ。

堺市はモータリゼーションが進んでいるため、市民の移動手段は主に車。ほとんどの人は困らないだろうけど、僕らはこの日のために東京から来ているので車はない。かといって、それぞれが試合開始に向けて忙しく準備をすすめる中「ちょっと小腹空いたからコンビニ行きたい」なんて頼めるはずもない。

困ったな、これは困った。おそらく試合開始前で余裕があるのは今が最後。ここで腹ごしらえをしておきたい。コンビニへ行ったら買い物含めて往復30分。暑いけど歩くしかないか…なんて考えていると、どこからともなくイイ匂いが。

そうだった、今日はキッチンカーがたくさん来てるんだった。やったー!!!

右を見れば串カツ、どて焼き、唐揚げ、肉吸いうどん…

左を見ればかき氷、クレープ、カステラ、ソフトクリーム…

さらには射的やボールすくいなどの縁日まで。祭りだ祭りだ〜!

時間と胃袋の都合で全て回ることはできませんでしたが、出店してくれた皆様、改めて本当にありがとうございました!今回出店してくれたお店の名前を書いておくので、実店舗の近くに寄った際にはぜひ行ってみてください!

今回参加してくれたキッチンカーの皆様

・一輪花
・KAGURA
・杵屋
・串カツしんや
・サムライカラアゲ
・シェアFOOD TRUCK Outdoor kitchen
・肉焼総本家三輪(50音順)

ものの始まりなんでも堺

もうじき100周年を迎える老舗スポーツ店SPOTAKAさんは、「珈琲×スポーツ」をテーマにした「高橋運動珈琲」というプロジェクトに取り組んでいる。そして、この珈琲がまぁ美味い。スッキリと飲みやすくて、それでいて味も濃く深みがある。話を聞くと、「スポーツの後でも飲みやすい珈琲」というコンセプトで作られているそうだ。

珈琲の他にも気になる商品があった。フライパン?でも取っ手の部分がバットになってる。なんだろうこれは。

こちらのフライパン、取っ手部分にはバットのグリップが使われているのだが、実はこれ、シュライクスの選手たちが使っていたバットで折れたものを再利用して作られている。

こだわっているのは見た目だけではない。フライパン部分には特殊な加工が施されていて、その技術を扱える職人は、現在日本に3名しかいないそうだ。さすがは堺。鉄砲や刀鍛冶で磨かれてきた技術が脈々と受け継がれているというわけだ。

受け継がれているといえば、シュライクスの選手が使っているバットは、筒香選手や坂口選手などの超有名NPB選手からいただいたもの。折れたバットとフライパン。受け継がれてきた「モノ×技術」。なんだかカッコイイ。こちらのフライパンは、現在店頭やオンラインによる出品はないため、イベントに出品すれば1時間で即完売してしまうそうです。

↓高橋運動珈琲の情報はこちら↓

https://www.instagram.com/takahashi_undou_coffee/

何度目かの緊急事態宣言

生中継の機材が置かれた部屋からは、陽気な鼻歌が聞こえてくる。中継班のリーダー・カンタケさんが流行りのK-popを口ずさんでいた。試合前はいつも時間に追われて忙しそうにピリピリとしているのに珍しい。これは調子が良いと見た。

カンタケさんとは?

株式会社KANTAKE.chの代表。大阪市中央区にオフィスをかまえ、販促物、ホームページなど各種デザイン・企画・制作、動画制作、システム開発、イベント運営などを手掛ける。堺シュライクスのオフィシャルトップパートナーでもある。

堺シュライクスは今年から新たに「自力での生中継」に取り組んでいる。選手たちの姿をより多くの人に届けたいけど、業者に頼めば1試合ウン十万とかかる。だったら独立リーグらしく自分たちでやっちまおうじゃないか、ということで始動した取り組みだ。

勢いよく始めたはいいものの、まぁこれが難しい。本当に、奇跡的に開幕戦はノートラブルで試合の映像をお届けできたが、前回の徳島インディゴソックス戦が酷かった。

台風を回避するために試合開始時刻を早めて、その結果準備する時間が足りなかったり、原因不明のトラブルで中継の要・センターカメラの映像が試合開始20分前に映らなくなるとか、もう踏んだり蹴ったり。

なんとか2回表あたりから復旧したセンターカメラも、3秒に1回動きが止まるようなカクカクした映像で、見ていた方には大変なストレスがあったと思います。楽しみにしていたファンの皆様、本当にすみませんでした!!

開幕戦ではノートラブル、徳島戦ではその真逆。言ってみれば1勝1敗なわけです。確率で言えば五分五分。ただ、今回の球場は開幕戦で勝利した(試合は負けた)くら寿司スタジアム堺ということで、実績があるわけですよ。

競馬に例えるなら、東京でのデビュー戦を勝利で飾るも、続く中山での2戦目は6着だったみたいな。上り坂苦手なのかな、最後の直線長いほうが末脚活かせるタイプなのかなって。そういう感じです。

とにかく、実績のあるくら寿司スタジアム堺でもう一度成功を収めようじゃないかという強い気持ちで挑んでいるわけです。でもね、競馬もそうだけど、予想にはいろいろな要素が絡みます。それこそ馬場状態とか前日までの調教とか、その日の体調とか気温とか……ん、気温?

そういえば、前回中継が成功した開幕戦は4月3日。小春日和で過ごしやすく、気温は20℃いかないくらいだったかな。今回はどうだ。

35℃の(ヘイ!)とろけそうな日(ヘイ!)。

そう、めちゃくちゃ暑かった。

この暑さで何が起きたのか。カメラのバッテリーがやられてしまったのだ。暑さでやられていたのは、青森出身の藤田だけではなかった。ジリジリと太陽光に照らされ続けたバッテリーは、熱を帯びてオーバーヒートしてしまい、試合開始30分前に1塁側の球追いカメラが完全に沈黙した。

それと同時に、先程まで陽気にK-popを口ずさんでいたカンタケさんも完全に沈黙した。

出遅れなんて何のその

17:00。ドッタバッタの中継班なんて知る由もなく、試合が始まる。

1回表、先発の西澤宙良(そら)は、和歌山の先頭打者にフォアボール、続く打者は送りバント、3番の深谷にセンター方向へヒットを許し、あっさりと先制される。

裏方同様、西澤も完全につまづいている。競馬に例えるならば、ゲートで出遅れた状態だ。出遅れで有名なのは、2015年の宝塚記念に出走したゴールドシップ。史上初の三連覇がかかったこのレースでは、圧倒的一番人気に推されたゴルシが見事に出遅れ、120億円ほどの馬券が一瞬で紙切れとなってしまったという(通称120億円事件)。

競馬での出遅れは致命的だが、野球なら問題はない。シュライクスは3回裏、相手投手の乱れもあって、クリーンナップで1点ずつ返し、1-3とする。

ようやく一塁カメラの復旧も終わり、落ち着いて球場を見渡す。PL、快苑、花忠社、横羽間、平安…グラウンド上では様々なユニフォームを来た選手たちがプレーをしていて、見たことのない景色が広がっていた。

8.8 ライパチ事件

見たことのない景色といえば、7回裏に珍事が起きた。

堺シュライクスのホーム戦では、球団マスコットのライパチくんがラッキーセブンの攻撃前に「堺っ子体操」を踊るのが恒例となっている。堺っ子体操とは、堺市民なら”誰でも踊れる”というラジオ体操のようなものだ。「誰でもは嘘だろ〜」と思って調べてみたら、堺市内に94ある市立小学校すべての学校で取り入れているそうだ。まじかよ。

詳しくは後述するが、今回のバトスタデーには「見たことのない景色を見せたい」というサブテーマがあった。その思いは確実にライパチくんの魂にも刻まれていた。

「久しぶりの堺っ子体操パチ!」

「選手たちのためにがんばって踊るパチ!」

ライパチくんは気合が入りまくっていた。競馬で言えば「入れ込みすぎ」「かかっている」という状態だ。無理もない。コロナで無観客の試合が続き、ライパチくんもアピールする場所を失いつつあった。NPBの世界でもそうだが、不要な選手は除外されていく。マスコットの世界も一緒だ。

完全に”かかっている”ライパチくんは、いつもより激しく堺っ子体操を踊る。その結果、ズボンが脱げた。ライパチくんのパンツは丸見えとなってしまい、マスコット史上類を見ない珍事が起きてしまった。

プレッシャーのかかる場面でチャンスを掴み、次のステップへ進む。

今回のイベントで芸人や選手に望んでいたところを、あろうことか球団マスコットがやってしまった。ライパチくん、それは絶対に見せてはいけない景色パチ…

ライパチくんの珍プレーによって、シュライクスは直後の攻撃で2点を追加した。

9回のマウンドにはブランク4年、元鳶職の絶好調男・中村拓が抑えとして登場し、宣言通り「全球真っ直ぐ」で三者凡退に討ち取った。堺シュライクスは9回裏の攻撃を迎えることなく試合終了!バトスタデーは3年連続勝利で飾ることができました!パチパチパチ!

バトスタデー閉幕 〜まだ見ぬ世界へ〜

試合終了後のベンチでは、珍しく、というかおそらく初めて、選手が前に立ってミーティングをしていた。今までその場に立っていた大西監督や藤江コーチは、傍からその様子を見守っている。

実は前回の徳島戦後、選手たちは「意識が低い」「本気度が見えない」「たるんでいる」と首脳陣からこっぴどく言われていたのだ。おまえら本気で上を目指しているんか?もっと必死にやれい、と。それ以降、選手たちは自分たちでミーティングを行うようになった。

その日の反省点を洗い出し、何が足りなかったのか、どうすれば足りない部分を補えるのかを自分たちで話し合う。言われたことだけやって学習できるのはAIくらいなもので、我々は自分たちで考え実践していかなければ向上できない。少しずつ、だけど着実に選手は変わろうとしている。いつの日か、「まだ見たことのない景色」を見せてくれると信じたい。

今回のバトスタデーには「野球×お笑い」というテーマがあったのだが、その裏には「見たことのない景色を見せたい」という想いがあった。

お笑い芸人には「MZ-1グランプリ」を通じて。選手たちにはバトスタデーを通じて。ファンの方々には、これら2つの取り組みを通じて。

「なにもこんな時期にやらなくてもいいんじゃないか」という声もたしかにあったが、正直やってよかった(やれてよかった)と思います。なんてったって、選手たちには時間がない。若い選手もいるけれど、NPBへ行くには”適齢期”の選手たちも多い。

コロナでまだまだ大変な状況が続きそうだけど、いろんな制限とか心無い声とかも多いけれど、それでも堺シュライクスは選手たち・ファンの方々にまだ見ぬ世界を届けるために、これからも斬新な挑戦を続けていきたいと思いました。

できっこないを、やらなくちゃ!

おしまい

一覧に戻る